子どもの嘔吐

子どもの嘔吐

写真:嘔吐

子どもが吐く原因はたくさんあり、ただの食べ過ぎから、吐血するような緊急性の高い疾患まで様々です。嘔吐が続いている場合は、尿が出ていない、ぐったりして活気がないなど脱水の症状があるかどうかを確認しましょう。また診断には、いつから何回ぐらいどのようなものを吐いているか、腹痛など他の症状があるかどうか、周囲に同じような症状の人がいないかなどの情報が有用です。

緊急性の高い状態としては、

  • 意識がない、ぐったりしている 
  • 血液を吐いた。緑色の液体を吐いた。
  • 頭を強く打った 
  • 激しい頭痛がある
  • 何度も嘔吐をくり返す
  • 強い腹痛がある
  • お腹がすごく張っている
  • 半日以上尿が出ていない、唇や舌が渇いている(脱水症状)

などがあります。その際はすみやかに病院を受診しましょう。

嘔吐をしているものの機嫌は悪くなく水分も摂取でき尿も出ているような状態であれば自宅でできる対応方法で様子を見ていても良いでしょう。しかし、症状が続いたり状態が変わることがあればすぐに医療機関を受診するようにしましょう。

子どもが嘔吐を起こす原因

子どもが嘔吐する病気で最も多いのは胃腸炎で、多くは細菌やウイルスの感染によって起こる感染性胃腸炎です。細菌はカンピロバクターやサルモネラ、ウイルスはノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがよく知られています。どの年代でも見られます。

新生児~乳児期では、胃腸炎以外に先天性の異常やミルクアレルギーなどでも嘔吐がみられます。先天的に胃腸の一部が様々な原因で狭窄していたり、胃から食道へ逆流が起きやすい状態だったりする場合があります。しかし、ただの飲ませすぎによる吐き戻し(いつ乳)の事もあるので、活気がありだいたい月齢相当に体重が増えているようであればあわてる事はありません。

生後3か月~2歳ぐらいまでの子には、腸重積症という腸の一部が折れ曲がってはまりこむ病気が突然起こる事があります。
これは、①嘔吐を繰り返す、②便に血が混じる、③ぐったりして顔色が悪い、④機嫌が良かったり悪かったりを定期的に繰り返す、といった症状がみられます。早く診断し治療を行う必要があります。

頭の病気が原因となることがあります。脳炎や脳症、髄膜炎の場合には、嘔吐に加え発熱や頭痛、意識障害(ぼんやりしている)などがみられます。突然の嘔吐が長引く場合は、稀ではありますが脳腫瘍が原因の事もあります。

幼児から就学児くらいの年齢で、運動会や遠足の後などで疲れた時や、風邪などの感染症にかかった後、または嫌なことがあった後に、これらが引き金となって突然頻回の嘔吐をしてしまうアセトン血性嘔吐症(いわいる自家中毒)という病態もあります。

その他には、多飲・多尿・口渇・体重減少といった症状が出る糖尿病の合併症であるケトアシドーシスや、男の子であれば強い下腹部痛を伴う精巣捻転、初期には風邪とみわけがつきにくい心筋炎などが原因で嘔吐する事もあります。

低年齢の子どもは、激しく泣いた、咳こんだ、食べすぎた、飲みすぎたなど、病気ではなくても嘔吐することがあります。

子どもが嘔吐をしたときは

まずは意識状態や嘔吐の回数・内容、腹痛や頭痛などの他の症状、尿がでているかなどを確認し、前述したような緊急性の高い状態がないかをチェックしましょう。判断がつかないときは病院を受診してください。

嘔吐の原因として最も多い最も多いウイルス性の胃腸炎であれば、だいたいは吐き始めの3~4時間程度は胃がからっぽになるまで吐きます。この間は何かを摂取するたびに嘔吐をし、胃液(黄色)を吐いたりするので、水分をとらせる場合もごく少量にとどめておきます。子どもは喉がかわきを感じるのでたくさん飲みたがりますが、自由に飲ませるとすぐに吐いてしまいます。3~4時間程たったら、徐々に胃腸も動き始めるので、まずは水分を少量・頻回で与えます。与える水分は、経口補水液(OS-1®など)が理想的ですが、嫌がって飲めないようであればスポーツドリンクなどでも良いです。母乳栄養児であれば母乳を与えてください。人工乳はやや胃に負担になりますが、基本的には希釈する必要はありません。ただの水やお茶はあまり体の中に水分がとどまらないのでおすすめしません。量としては、最初はスプーン1杯(約5ml)程度から開始し、それを数分毎に与えます。嘔吐がなければ徐々に1回量を増やし間隔もあけていきます。そして、水分をとっても吐かなくなれば固形物を再開してください。なるべく早めにいつも通りの食事に戻すことが腸上皮の再生には有用といわれていますが、嘔吐がおさまり食事を再開するころから下痢が始まる事も多いので、食欲や状態を見ながら食事内容を調整しましょう。

子どもは、「なぜ自分が嘔吐しているのか」という理由や原因を正しく理解できません。吐いているということ、吐いている自分に対して恐怖を抱いてしまいます。保護者の方は、子どもが吐いてしまっている時には優しく声をかけ、気持ちも落ち着かせていくことが必要です。
また、感染性胃腸炎など、細菌やウイルスが原因で嘔吐をしている場合は、その嘔吐物によって大人も感染をする可能性があります。そのため、嘔吐物の処理をした後はしっかりと手を洗うようにしましょう。

嘔吐に対する小児科診療

診察では、脱水の程度など全身状態を確認し、症状の経過や状況を聞いて原因の診断をします。必要であれば採血や尿検査、画像検査などを行うこともあります。嘔吐の原因となる病気があればその病気の治療を行いますが、原因として多い感染性胃腸炎は対症療法が主になります。嘔気・嘔吐には吐き気止め、下痢には整腸剤、脱水状態があれば点滴を行います。子どもは状態が変化しやすいので、嘔吐が続いたり気になる症状があれば早めに病院を受診してください。