予防接種

予防接種

写真: 予防接種

当院では日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールをもとに、おおむね下記スケジュールで予防接種を行っております。なお、小児科学会の見解として同時接種が推奨されています
だいたい生後2ヶ月からスタートします。接種を推奨される期間、公費負担(無料)で受ける事のできる期間が決まっているのでスケジュールを確認し忘れずに病院を受診してください。

接種可能なワクチン

当院では、下記の予防接種を受けることができます。

  • 肺炎球菌
  • ヒブ
  • B型肝炎
  • おたふくかぜ(ムンプス)
  • 麻しん風しん(MR)
  • 日本脳炎
  • 水痘
  • ロタウイルス(ロタテック、ロタリックス)
  • BCG
  • 2種混合
  • 4種混合
  • 子宮頸がんワクチン(ガーダシル、シルガード)
  • インフルエンザ

予防接種スケジュール(目安)

  2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月 5ヶ月 7ヶ月 1歳 1歳半 3歳 4歳 5~6歳
肺炎球菌            
ヒブ            
B型肝炎              
ロタ              
4混            
BCG                  
麻疹風疹                
水痘                
おたふく                
日本脳炎               ①②  

9歳:日本脳炎④、11歳:2種混合、小6~高1:子宮頸がん
毎年:インフルエンザ(13歳未満は2~4週間あけて2回)
※おたふくかぜ、インフルエンザは自費です。

全てのワクチンはメリットがデメリットを上回る事が科学的に証明されています。重篤な合併症を起こしうる病気に罹るリスクを減らすためにも確実に接種していきましょう。

予防接種を受ける前に

  • 予診票をよく読み正確に記入しましょう。
  • 親子(母子)健康手帳に記録をするので忘れずに持参してください。
  • 腕や足をだしやすい服装で来院してください。
  • 心臓病・肝臓病・腎臓病・血液の病気などの治療を受けている人はかかりつけで予防接種を受けてもよいか確認しておいてください。
  • 接種当日に岡山市以外に住民登録がある人の定期接種を希望する場合には、住民票のある市町村にあらかじめ問い合わせておいてください。
    依頼書などの書類が必要となります。
  • 推奨される接種スケジュールから大きく遅れてしまった場合は適宜ご相談ください。

注意事項

予防接種を受けられない人

  • 接種する予防接種で過去に強いアレルギー反応を起こした人
  • 37.5℃以上の熱がある人
    ※発熱したら熱がさがってから1~2週間あけての接種を推奨します。麻しん、風しん、おたふくかぜ、水ぼうそうにかかった場合は2~4週間程度あけてからの接種が推奨されています。不明な際は事前に御相談下さい。
  • 重篤な急性の病気にかかっている人(軽いカゼ症状は接種可能。喘息発作中などは不可。)
  • ロタウイルスの予防接種のみ:未治療の先天性消化管疾患がある人、腸重積症の既往がある人
  • その他、医師が診察し不適当と判断した人

医師との相談が必要な人

  • 数カ月以内にけいれんをおこした人
  • 中耳炎や肺炎によくかかり治りが悪い人、免疫不全症の家族がいる人
  • 周りの人がはしか(麻しん)、三日はしか(風しん)、みずぼうそう、おたふくかぜにかかっている人
  • 薬や食べ物でアレルギーを起こした事がある人

鶏卵アレルギーと予防接種

鶏卵そのものを使って製造されているものにインフルエンザワクチンがあります。ただ、アレルギーの原因となる卵白アルブミンの混入は微量なため、通常は接種可能です。
ニワトリ胚細胞由来のワクチン(麻しん風しんワクチン、おたふくかぜワクチン)は卵白と交差反応性を示すたんぱく質が含まれている可能性がありますが、その含有量は極めて少ないため通常は接種可能です。

薬アレルギーと予防接種

麻しん・風しんワクチン、おたふくかぜワクチン、水ぼうそうワクチンにはごく少量の抗菌薬(カナマイシン、エリスロマイシン)を含むため、これらの抗菌薬に対してアナフィラキシーの既往がある人は接種できません。

予防接種を受けた後に

  • 急性の副反応がおこる場合があるためワクチン接種後少なくとも15分間は病院の中で様子をみます。何かあればすぐに声をかけてください。
  • まれにアナフィラキシー反応(発疹、嘔吐・腹痛、咳・呼吸苦、意識消失)がおこる事があります。
  • その他、年長児では痛みや恐怖・不安に対して血管迷走神経反射がみられる場合があります。
    これは精神的動揺により自律神経が乱れ、一過性に血圧が下がり脳血流が低下することにより顔面蒼白、冷や汗、気分不良、悪心・嘔吐、失神など起こします。横になってしばらく休む事で速やかに改善します。
  • 接種当日、入浴は可能ですが接種部位を特にこすったりしないようにしましょう。
  • 接種当日はなるべく激しい運動は避けましょう。

一般的な予防接種後副反応について

  • 予防接種による発熱は不活化ワクチンであれば接種後1~2日、生ワクチンなら1~2週間程で起こりやすく、だいたい1日で熱はさがります。その他、数日~1週間程度の倦怠感(だるさ)、接種部位の腫れ・発赤・痛みなどが頻度の多い副反応です。これらはほとんどの場合軽症であり特別な治療は必要ない事が多いです。
  • アナフィラキシー
    まれではありますが、ワクチン接種後にアナフィラキシー(強いアレルギー反応)がおこる事があります。ワクチンの成分そのものや添加物、製造過程で混入する蛋白などが原因となります。
    アナフィラキシーをおこしたワクチンはそれ以後接種できません。

ワクチンの種類

麻しん・風しんワクチン、おたふくかぜワクチン、水ぼうそうワクチンにはごく少量の抗菌薬(カナマイシン、エリスロマイシン)を含むため、これらの抗菌薬に対してアナフィラキシーの既往がある人は接種できません。

生ワクチンはウイルスや細菌等を弱毒化して製造されたワクチンです。得られる免疫は強固で長続きします。弱毒化しているとはいえ病原体そのものを接種するため、免疫不全症の人や免疫抑制剤などを使用して免疫が低下している人には接種する事ができません。

それぞれのワクチンについて

@定期接種(公費負担)

不活化ワクチン・トキソイド
  • (13価)肺炎球菌
    肺炎球菌は細菌性髄膜炎や菌血症、肺炎、中耳炎など様々な病気の原因菌となります。とりわけ、細菌性髄膜炎はてんかんなどの後遺症を高率でひきおこし、時に命にかかわる場合もあるこわい病気です。
    2013年に定期接種が開始されてから肺炎球菌髄膜炎は減少しています。
  • ヒブ;Hib(インフルエンザ菌b型)
    インフルエンザ菌はインフルエンザウイルスとは関係ありません。
    インフルエンザ菌b型は細菌性髄膜炎の代表的な原因菌です。その他、ヒブは高熱や急激な呼吸困難を起こす喉頭蓋炎などの原因菌としても知られています。日本では2013年に定期接種が開始されてからヒブ髄膜炎が大幅に減少しました。
  • 四種混合(DPT-IPV)
    文字通り4種類の病原体に対する混合ワクチンです。11歳でうける二種混合(DT)はジフテリア(D)と破傷風(T)の混合ワクチンです。
    1.ジフテリア(Diphtheria)
    ジフテリアはジフテリア菌と菌が産生する毒素によってひきおこされる病気です。
    症状は高熱、のどの痛み・腫れ、呼吸困難、犬が吠えるような咳、筋力低下、麻痺や心筋炎などです。
    予防接種が普及している国ではこの感染症はまれです。
    2.百日咳(Pertussis)
    百日咳は百日咳菌の感染でおこります。
    典型的には普通のカゼと同じような症状で始まり(カタル期)、徐々に咳が強くなっていきます。乾いた咳が連続的に出て、咳の間に息を吸うときに笛のような音(whoop)がでるのが特徴です(痙咳期)。3か月未満の乳児では重症化しやすく、無呼吸をおこすこともあります。その他、合併症として肺炎、脳症、けいれん、肺高血圧症などがあります。近年、成人での百日咳症例が増えており、知らず知らずのうちに子どもにうつしている場合もあります。発症早期(カタル期)に適切な抗生剤を使用する事で症状を軽減する事が期待できますが、診断される頃にはすでに強い症状がでている事が多いです。
    3.破傷風(Tetanus)
    土壌に広く生息する破傷風菌が傷口から入り込んで破傷風がおこります。
    グランドで転んでケガをした、傷のある手で土いじりをしたなどでも破傷風菌は傷口から侵入します。
    菌の産生する強い神経毒素により、口が開きにくい、手足が動きにくい、けいれんなどの症状がおこる事があり、対処が遅れると命にかかわる場合もあります。予防接種をすることでリスクは激減します。
    4.ポリオ(Polio)
    ポリオは脊髄性小児マヒとも呼ばれています。
    感染した人の便に含まれるポリオウイルスが何らかの形で口から入ることでうつります。
    多くは不顕性感染(無症状)でおわりますが、まれに手足の筋や呼吸筋のマヒをおこし後遺症を残したり、命を落としたりする場合もあります。
  • B型肝炎
    B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)によっておこる肝臓の病気です。
    急性肝炎を起こす場合やHBVが肝臓に潜伏し持続感染した状態(キャリア)になる場合があります。
    キャリアになった時は成人にかけて徐々に肝硬変・肝がんになったり、血液の病気や免疫抑制剤などで免疫が低下したタイミングでウイルスが急激に増殖し劇症肝炎を起こしたりします。
    感染者の血液や唾液、涙などの体液を介して感染(水平感染)します。
  • 日本脳炎
    日本脳炎は日本脳炎ウイルスに感染している豚から蚊を媒介してうつります。人から人にはうつりません。多くは不顕性感染(無症状)や軽度の症状で終わりますが、時に急な高熱、頭痛、嘔吐、めまい、傾眠などの症状が2~4日続いたのち、意識障害、けいれん、昏睡、麻痺などを起こす脳炎となります。日本脳炎予防接種の標準初回接種年齢は3歳からですが、日本脳炎流行地域(中国、韓国、東南アジア全域、インド、パキスタンなど)に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者が発生した地域、ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域(西日本の一部)に居住する小児に対しては、生後6か月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨されています。
    岡山県でも日本脳炎の患者さんがここ10年以内に報告されています。特にリスクの高い、大きな養豚場がある地域(北部、西南部)などでは蚊が飛ぶ夏前までに接種を行う事を推奨されています。
    ※日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について
    https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=197
  • ヒトパピローマウイルス
    ヒトパピローマウイルス(HPV)は主に子宮頸がんをひきおこすウイルスです。
    日本では年間約10000人が発症し、約2800人が亡くなっています。すべての年代の女性が罹患する可能性がありますが近年20~30代で急増しています。HPVはほとんどが性的接触で感染します。性交渉開始前のワクチン接種が最も効果的です。
    このワクチンは筋肉注射のため副反応として接種部位の疼痛や腫脹がよくみられます。そして、ワクチン接種後に広い範囲に広がる痛みや手足の動かしにくさ、不随意運動(体の一部が勝手に動く)などを中心とする多様な症状が起きたことが報告されています。これはワクチン接種後の局所の疼痛や不安等が症状のきっかけとなった可能性は否定できない、とされています。継続的に調査はされていますが、このワクチンを接種した事がない人でも同様の症状をおこした事が報告されており、ワクチンと直接因果関係があるかどうかは証明されていません。ワクチンの接種を受けた後や、けがの後などに原因不明の痛みが続いたことがある方はこれらの状態が起きる可能性が高いと考えられているため接種については事前に医師に相談が必要です。
    現在「積極的な勧奨の差し控え」となっていますが、これは市町村などが対象者に接種を促すハガキを送る等の取り組みを控えるという意味で、定期接種(公費負担)の対象外とするという意味ではありません。 
    各種学会が合同で、「HPVワクチンの有害事象の実態把握と解析、接種後に生じた症状に対する報告体制と診療・相談体制の確立、健康被害を受けた被接種者に対する救済などの対策が講じられたことを受けて、積極的接種を推奨する」との見解を出しています。
    世界的に広く公的な予防接種が行われており、検診と組み合わせる事で子宮頸がん発症予防に高い効果を示しています。とても有用なワクチンと考えられますので、中学1年生の女子は接種をお勧めします。不安な点などあれば御相談下さい。
    @厚生労働省
    ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/
生ワクチン
  • BCG
    BCGは結核の予防接種です。結核は今でも日本で発生しており、肺に感染する肺結核、全身に結核菌がばらまかれる粟粒結核、その他、結核性髄膜炎などをおこします。
    BCGは一般にはんこ注射とよばれるスタンプ式の細い針がついたものをおしつけて接種します。
    通常は接種直後しばらく赤くなった後、1ヶ月程かけてゆっくりと化膿し、その後徐々にかさぶたとなり乾燥していきます。しかし、接種後1週間ほどで膿が出てくるほどの反応がおこった場合はコッホ現象といって、その子どもや周囲の人に結核に感染している人がいる場合があるので早めに病院にご相談ください。
    BCGの副反応として、まれに接種した方のわきのリンパ節がはれる場合があります。ほとんどの場合は様子を見るだけでよいのですが、どんどん赤みが強くなったり、膿が出てきたりするようであれば病院にご相談ください。
  • 麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)
    麻しん(はしか)をおこす麻しんウイルスは感染力がとても強く、空気感染をします。
    通常約12日の潜伏期間後に充血や目やに、発熱、咳、鼻汁などのカゼ症状が数日続き、いったん熱がさがったかと思われてもすぐに高熱となり色素沈着を残す発疹がでます。合併症としては脳炎、肺炎、失明など重篤なものがあります。
    日本では主に近隣諸国からの輸入感染症として地域的小流行がおこっています。
    風しん(三日はしか)は14~21日の潜伏期間をおき発熱、全身の発疹、耳介後部などのリンパ節腫脹といった症状が出現する病気です。発疹は3日ほどで治ります。無症状だったり症状が軽くすんだりして知らず知らずのうちに人にうつす事があります。妊婦が妊娠初期に感染すると先天性風しん症候群といって胎児に様々な障害(白内障・緑内障、心疾患、難聴、精神運動発達遅滞など)をおこす場合があります。 
    麻しん・風しんワクチンはニワトリ胚細胞由来のワクチンで卵白と交差反応性を示すたんぱく質が含まれている可能性がありますが、その含有量は極めて少ないため、鶏卵アレルギーがあっても通常は接種可能です。
  • 水痘(みずぼうそう)
    みずぼうそうは水痘・帯状疱疹ウイルスによっておこります。
    初めての感染の時は発熱、全身性の水疱が出ます。合併症としては肺炎や脳炎などがあります。一度感染すると体の中に潜伏し、免疫が弱ったタイミングで再活性化し帯状疱疹となります。
  • ロタウイルス
    ロタウイルスは胃腸炎(嘔吐下痢症)をおこすウイルスです。特に乳児は重症化しやすく、容易に脱水状態となり点滴や入院を必要とする場合も多いです。
    毎年冬から初春にかけて流行します。感染すると嘔吐と水様下痢(酸臭のするクリーム色の便)を繰り返し、脱水症状をひきおこします。合併症としてはけいれんやごくまれですが脳症などがあります。ロタウイルスに対する特効薬は存在しないため対症療法が中心となりますが、ワクチンを接種することにより重症化しにくくなります。
    副反応として腸重積症があり、接種後1~2週間程度は発症リスクが通常よりわずかに高まると報告されています。
    腸重積症は、腸の一部が折れ曲がってはまりこむ病気です。 次のような様子が一つでも見られるときは病院を受診しましょう。
    ①嘔吐を繰り返す、②便に血が混じる、③ぐったりして顔色が悪い、④機嫌が良かったり悪かったりを定期的に繰り返す
    腸重積症はワクチン接種にかかわらず、生後3か月~2歳ぐらいまでの赤ちゃんがかかりやすい病気です。腸重積症発症のリスクを減らすために生後14週6日(約3か月と10日)までには接種を開始しなければなりません。なるべく生後2ヶ月で他の予防接種と同時に開始しましょう。

自費(生ワクチン)

  • おたふくかぜ
    おたふくかぜはムンプスウイルス感染症です。
    主な症状は発熱と両側耳下腺(耳の下あたり)の腫脹(はれ)です。片方ずつはれたり、顎下腺(あごのあたり)がはれる人もいます。はれ始めは痛みを訴える子が多いです。
    合併症として無菌性髄膜炎(頭痛・嘔吐)や不可逆性の難聴、男児であれば精巣炎などがあります。後遺症を残す合併症があるため、ワクチンによる予防が推奨されます。  
    おたふくかぜワクチンはニワトリ胚細胞由来のワクチンで卵白と交差反応性を示すたんぱく質が含まれている可能性がありますが、その含有量は極めて少ないため、鶏卵アレルギーがあっても通常は接種可能です。

接種時の予約について

  • 院内に在庫があれば予約なしでも予防接種は可能ですが、できれば3日前までにご予約をお願いします。
  • インフルエンザワクチンに関しましては、シーズンになりましたら別途お知らせ致します。