食物アレルギーについて

『食物アレルギー』について皆さんも一度は聞いたことがありますよね。
当クリニックの竹本院長はアレルギー専門医であり、食物アレルギーを初め、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の診療を数多く経験されております。ホームページなどをご覧になり、当クリニックを受診してくださる方も増えてきております。
アレルギー疾患のひとつである食物アレルギーについてお話をしていきたいと思います 。
まず食物アレルギーの原因となりやすい食物について書きたいと思います。年齢により原因となりうる食物には違いがありますが、最近の特徴としては、低年齢での”くるみ”や”カシューナッツ”、 “アーモンド”などの『木の実類』が原因となることが増えています 。
昨今の健康志向により、木の実類を早くから摂取することも要因とされています。
また、クッキーやチョコレートに入っていて、知らないあいだに摂取していることもあります。
食品表示法に基づき食物アレルギーの原因となりやすい8大食物(鶏卵、牛乳、小麦、ナッツ類、落花生、そば、えび、かに)の表記は義務付けられていますが、お店内で作られて販売している、イベントに出店しているお店などで購入するものには表記がされていないことも多く、食物アレルギーがある方は注意が必要な場合があります 。よく勘違いされやすい落花生(ピーナッツ)は、ナッツ類とは別物で『豆類』に分類されます。
次回からは、8大原因食物についてそれぞれの特徴を順にまとめさせていただこうと思います。
食物アレルギー

おたふくかぜワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、1歳になったら接種できるワクチンにおたふくかぜ(ムンプス)ワクチンがあります。おたふくかぜは、流行性耳下腺炎あるいはムンプスとも呼ばれ、ムンプスウイルスの感染によって起こる感染症です。主な症状は発熱と唾液腺(とくに耳下腺)の腫れ、痛みです。感染した人の約3割は感染しても明らかな症状がでません。感染するのは基本的には飛沫感染(唾液など)で、周囲の人に感染させる可能性がある期間は、耳下腺腫脹の6日前から耳下腺・顎下腺・舌下線の腫脹が発現してからほぼ5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止となりますが出席停止などに関する決まりはありません。
発症の好発年齢は4~5歳が最も多く、次いで2~3歳、6~7歳の順で、報告の約70%が3~7歳とされ、子どもに起こりやすい病気の1つであることが分かります。2~3週間の潜伏期(平均18日前後)とされます。合併症としては、精巣炎、卵巣炎、膵炎、腎炎、髄膜炎、髄膜脳炎および感音性難聴などがあります。思春期以降に初めて感染すると、精巣炎(20~40%)や卵巣炎(5%)の合併頻度が高くなり、精巣炎を合併した場合には様々な程度の睾丸萎縮を伴い、精子数は減少しますが不妊症の原因となるのは稀です。また、腺組織では唾液腺のほか膵臓に炎症を起こすことがあります。
髄膜炎は合併症として珍しくなく、おたふくかぜの経過中の発熱、頭痛、嘔吐は髄膜炎を疑う症状として注意が必要です。ただし、髄膜炎の症状がなくても髄液細胞数の増加がみられたり、ウイルスが検出されたりすることもあります。感音性難聴はおたふくかぜの重要な合併症で、発症すると聴力の回復は困難でおたふくかぜの合併症として最も警戒すべきものの1つと考えられています。
国内では4~6年周期で流行が報告されていましたが、ここ数年間流行はみられません。
おたふくかぜのワクチンは現在、定期接種のワクチンではなく、任意接種となっています。接種には料金がかかります。接種の標準的なスケジュールは、麻しん・風しん(MR)ワクチンと同時で、1回目は1歳になったら早期に、2回目を年長さんに接種するのを推奨しています。過去には1回で十分とされていましたが、1回のみ接種している国ではおたふくかぜの発症率予防が88%減少し、2回接種している国では発症率予防が99%まで上昇したことが分かっており、現在は2回接種することを推奨されています。
予防接種

画像元:日本小児科学会より抜粋

子宮頸癌ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
小学校6年生から高校1年生の女性を対象にしたワクチンで、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンがあります。子宮頸癌は高リスク型(発癌性)のヒトパピローマウイルスが持続感染し、感染から数年から十数年の後に発症すると考えられています。ヒトパピローマウイルスの感染はほとんどが性的接触によるもので、性的接触によって子宮頸部粘膜に微細な傷が生じ、そこからウイルスが侵入して感染すると考えられています。感染すること自体は特別なことではなく、性交経験がある女性であれば誰でも感染する可能性があります。子宮頸癌は女性特有の癌としては、乳癌に次いで罹患率が高くなっていて、たとえ死に至らないまでも、ごく初期の癌を除いては子宮摘出となる可能性があり、その場合は妊娠や出産への影響はもちろん、排尿障害などの後遺症により日常生活に支障をきたすこともあります。また初期に診断を受け、円錐切除術などを受けた場合であっても、その後の妊娠では切迫早産や早産のリスクが高くなるといわれています。近年では20~30代で増加しているのが特徴です。なお子宮頸癌に関わるヒトパピローマウイルスの型は、国や地域によって多少の相違はありますが、およそ半数から3分の2がHPV16型と18型であるといわれています。
子宮頸癌だけでなくヒトパピローマウイルスの感染は、肛門癌、尖圭コンジローマ、外陰上皮内腫瘍・膣上皮内腫瘍などの癌も引き起こすとされます。誰が何を発症するかはわからないため、多くの人におけるワクチン接種によるHPV感染の予防、そして検診による早期発見が重要となります。ワクチン接種をした後でも20歳をすぎたら定期的な検診が呼びかけられています。
現在日本では3種類のHPVワクチンが使用できます。大きな違いはそれぞれワクチンに含まれているヒトパピローマウイルスの型の種類が違うというところです。一番少ないもので2つの型、その次に4つの型、2023年4月から認証された9つの型が含まれた3種類になります。どのワクチンにも予防効果がみられますが、すでに感染したウイルスを排除したり、病変の進行を抑制したりする作用はなく、ウイルスに感染する前に予防をすることが重要になります。子宮頸癌から検出されるヒトパピローマウイルスの型はワクチンに含まれない型もあるためすべての子宮頸癌を予防することはできません。過去にHPVワクチンの接種による副反応が取りざたされ、接種が控えられた時期があり、現在も副反応を心配される声がありますが、研究が進められ副反応のリスクよりワクチン接種をする有効性は明らかに高いとされ、現在はワクチンの積極的推奨が言われています。ワクチン接種が控えられた間に定期接種をする機会を逃している女性も現在は対象とする制度があります(2025年3月末まで)ので、自身が対象ではないか一度、確認をすることをお勧めしています。
 HPVワクチンの接種は、種類や接種開始年齢によって2回もしくは3回の接種が必要となり、接種間隔を一定数空ける必要がありますので、スケジュールに余裕をもって接種をしていただくことをお勧めします。
予防接種

二種混合ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
 以前、お伝えした四種混合ワクチンの第Ⅱ期として接種するワクチンにニ種混合ワクチン(DT)があります。四種混合ワクチンに含まれている4種類のうちジフテリアと破傷風の2種類が含まれています。定期接種の年齢は11~12歳になるため、中学生であっても13歳未満であれば接種が可能です。定期予防接種が頻回だった年齢から離れているため、接種忘れの多いワクチンのひとつになりますので注意が必要です。ジフテリアと破傷風の詳細については、四種混合ワクチンの記事を参照して頂ければと思います。
 近年では、年長児やDTワクチンの対象年齢児に百日咳を含んだワクチンの三種混合ワクチンの接種が推奨されています。その理由の一つとして、百日咳にかかる年齢で最も多いのが5歳~15歳であることが分かっているからです。このうち約8割が四種混合ワクチンを4回接種しており、一時的には百日咳への抗体ができていたにも関わらず、最後に接種してから4年から10年程度でその効果が減弱するため、この年齢層に感染のピークがあるとされています。また成人になってからも、30代から40代で感染のピークがあることも分かっており、百日咳に対する抗体を維持しその予防効果を発揮するために三種混合ワクチンは有用であるとされています。しかし三種混合ワクチンは、定期予防接種の対象ワクチンではないため、接種するには一定の費用がかかります。当院ではDTワクチンの代わりに三種混合ワクチンを接種する方もおられます。
 DTワクチンの接種は一度きりとなります。お住まいの地域によっては接種対象時期になりますとハガキが届く地域もありますので、11歳のお誕生日を迎えられましたら早めの接種をしていただくことをお勧めします。また費用はかかりますが三種混合ワクチンの接種もご検討して頂ければと思います。
予防接種

日本脳炎ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、3歳になったら接種できるワクチンに日本脳炎ワクチンがあります。
ブタに生息する日本脳炎ウイルスは、わが国では主にコガタアカイエカという蚊によって媒介されます。ブタと蚊の間で感染が起こるとされていますが、ブタは感染していても通常、症状が現れません。しかし、感染しているブタの血液を吸った蚊がヒトを刺すことでヒトにも感染が起こり、感染した人のうち100~1000人に1人が脳炎症状を発症すると報告されています。発症すると高熱、頭痛、嘔吐、意識障害やけいれんなどの症状を示す急性脳炎を起こします。致命率は20~40%(脳炎症状後の致命率は18%)で、幼少児や高齢者では死亡のリスクが高く、生存者の45~70%に精神障害や運動障害などの後遺症が残るとされています。特に小児では重度の障害を残すことが多いとされています。
コガタアカイエカは水田や沼地などの大きな水たまりに産卵する性質があり、暑い日中よりも日没以降から活動が活発になることから、日没以降に野外に出る際は、虫よけスプレーや長袖や長ズボンを着用して肌を露出しないように工夫をしたりして蚊に刺されないように予防することも大切な予防法のひとつです。
 日本脳炎ウイルスのヒトへの感染においてブタは重要な役割を果たしています。ブタは感染すると体内で多量のウイルスが体内で増殖し、血液中にウイルスが検出されるウイルス血症を起こします。最近、野生のイノシシもブタと同様、感染後にウイルス血症を起こす動物として注目されています。
 日本脳炎の患者発生は近年少なくなっていますが、2016年を除き毎年10人以下が西日本を中心に発生しています。2016年は25年ぶりに10人を超え、報告数は11人となりました。
 日本脳炎ワクチンは生後6ヶ月から接種は可能とされており、過去に日本脳炎患者の発生が認められている地域では、3歳よりも早期にワクチン接種が推奨されているところもあります。岡山県でも一部地域では、早期接種が推奨されています。また、自宅の近くに養豚場がある場合も早期接種をお勧めしています。
日本脳炎ワクチンは、全部で4回の接種になります。通常では第Ⅰ期として3歳のお誕生日を迎えたら接種を開始し、1回目の接種後1ヶ月以上の間隔をあけて2回目の接種を行います。2回目から3回目の接種までは、1年の間隔をあけて、3歳~4歳の間に3回接種をするようになります。第Ⅰ期は7歳5ヶ月までが定期予防接種の年齢対象になりますので、接種忘れに気付きましたら可能な限り早めに接種をしていただくことをお勧めします。第Ⅱ期として、4回目は9歳~12歳の間で接種をします。お住いの地域によっては、9歳のお誕生日を迎えたころにご案内のハガキが届きます。

予防接種

水痘ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、1歳になったら接種できるワクチンに水痘(みずぼうそう)ワクチンがあります。
水痘は『みずぼうそう』と呼ばれ、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の初感染によって起こる全身性の感染症です。感染力は強く、ワクチン接種をしなければ10歳までに約80%の小児がかかるといわれてきました。水痘の主な症状は発疹と発熱です。発疹は、皮膚の表面が赤くなる紅斑から水ぶくれを経てかさぶたになるという経過をたどります。発疹のピークの際は、すべての発疹が混在しているのが特徴です。一般に水疱の数は症状が出てから数日以内に250~500個以上に増えますが、ワクチンを接種している場合は発疹の数が抑えられる場合があります。発熱の程度は通常38℃前後で2~3日続きますが、40℃を超えることもあり、その際に熱性けいれんを合併していることがあります。基本的には1週間程度の経過で治癒することがほとんどで、健康な小児の場合は、一般に軽症で済みますが、中には重症化し、入院が必要となったり、死亡したりすることもあります。成人では小児に比較して重症化することが多くなり、死に至る危険性もあります。潜伏期は2~3週間とされています。
合併症としては、小児で注意が必要なのは上記の熱性けいれんに加え、気管支炎、肺炎などです。かゆみがあり水疱の部分を搔き壊してしまい、細菌の二次感染を起こすこともよくあり、跡が残るお子さんもおられます。また、二次感染からとびひ・蜂巣炎・膿瘍・敗血症に進展する場合もあります。
近年、保育園や幼稚園に入所する児童数が増加しており、感染すると登園可能になるまで1週間程度必要であり、保護者もその間仕事を休まなければならず、ワクチンにより予防しておくことは、本人、保護者にとってもメリットがあるといえます。
 免疫機能が低下するような疾患にかかっている方がかかると重症化しやすく、最悪の場合は死に至る場合があります。妊婦の水疱は重症化しやすいと言われておりますが、出産前5日から出産後2日までの女性が発症すると、出生した児は極めて重症な水痘を発症します。また、妊娠20週までの妊婦が水痘にかかった場合、約2%の児が先天性水痘症候群(低出生体重児・四肢低形成・局所的な筋委縮・脳炎・小頭症など)を発症します。そのため、妊婦さんがいらっしゃるご家庭のお子様が水痘にかかった場合は、より注意が必要になります。
水痘ワクチンは、1歳のお誕生日を迎えたらなるべく早く接種し、免疫をつけることが大切です。特に集団生活へ入られるご予定のあるお子さまは、水痘にかかる可能性が高くなりますので、早めの接種をお勧めしています。1回目は1歳で接種し、接種後3ヶ月以上の間隔をあけて3歳になるまでに2回目の接種を行います。3歳を迎えられたあとの接種は定期接種の対象外となりますので注意が必要です。また、水痘ワクチンを接種する前、もしくは1回目の接種後に水痘にかかった方は定期予防接種としてのワクチン接種ができなくなります。その際は水痘にかかったことを接種前にスタッフにお知らせください。
予防接種

MRワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、1歳になったら接種できるワクチンにMR(麻疹・風疹)ワクチンがあります。
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスの感染によって起こる急性熱性発疹症の感染症です。潜伏期は約10~12日で、「カタル症状(咳・鼻汁)、結膜充血、めやに」等とともに38℃以上の発熱が認められます。この状態が数日続き、この時期はカタル期と呼ばれ、最も感染力が強いとされる時期です。その後発熱は約1℃はさがりますが、平熱に戻ることはなく再び高熱となり、耳の後ろから発疹が出現し始めます。発疹が出現する前日から「コプリック斑(周りが赤く中心が白い、口腔内できる小さい粘膜疹)」と呼ばれる粘膜疹が口腔内に認められます。発疹は1~2日のうちに全身に広がり、コプリック斑は数日で消失しますが、発疹期になるとカタル症状はさらに悪化し39~40℃台の発熱がさらに4~5日続きます。肺炎・中耳炎・クループ症候群等を合併することが多く、脳炎を合併することもあります。肺炎および脳炎は麻疹の2大死因といわれており、重症感染症の代表的なものといえます。日本では、2015年3月27日にWHO(世界保健機関)により麻疹排除状態にあると認められていました。しかし2023年に東京で海外から帰国後の日本人が日本で発症し、その方が利用したとされる新幹線の同車両に乗車していた他の方にも発症が認められるという報道がされました。空気感染、飛沫感染、接触感染で伝播され、感染力は非常に強く、同空間に短時間一緒にいただけで感染をするとされます。免疫がない人に感染すると、ほぼ100%発症します。
風疹(三日はしか)は、風疹ウイルスの感染によって起こる急性熱性発疹症です。春先から夏にかけて患者発生が多くみられ、潜伏期は2~3週間で、主な症状として発疹、発熱、リンパ節腫脹が認められますが、3つの症状がそろうのは約半数とされます。まれに血小板減少性紫斑病や脳炎を合併することがあります。一方で感染しても約15~30%の人は症状が現れないで終わることも知られています。飛沫感染、接触感染で伝播しますが、発疹の出る1週間前から発疹が出た後1週間程は感染力があるといわれています。しかし感染力は空気感染する麻疹や水痘と比較すると弱いといえます。症状は比較的軽症で、予後は一般に良好ですが、血小板減少性紫斑病、脳炎等の合併症が発生することがあり、軽視できない疾患です。大人が罹患すると、その症状は乳幼児と比較して一般に重症になりやすく、高熱の持続や関節痛の発現頻度が高いと言われています。風疹の最も重要な点は、妊娠20週頃までの妊婦が風疹ウイルスに感染すると、胎児も風疹ウイルスに感染し、出生後に難聴・先天性心疾患・白内障・精神運動発達遅滞等の先天性風疹症候群を発症する可能性が高くなる点です。そのため妊娠を希望される女性やその配偶者、周囲の人が風疹に対して免疫があるかを調べ、なければ妊娠前に風疹ワクチンを接種し免疫をつけることは非常に重要です。
MRワクチンは、1歳のお誕生日を迎えたらなるべく早く接種し、免疫をつけることが大切です。第Ⅰ期は1歳で接種し数年は高い免疫が維持されるとされ、第Ⅱ期の小学校就学前までに追加接種する必要はないと言われます。ただし1回のみの接種は、抗体がつかない人も約5%に認められるため、流行地域によっては追加接種をお勧めされる場合もあります。
予防接種

BCGワクチンについて

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、生後5ヶ月から生後8か月に達するまでに接種するワクチンにBCGワクチンがあります。BCGワクチンは結核予防ワクチンです。
結核は昔の病気のようなイメージがありますが、現在でも年間約1万5千万人の患者さんが発生している感染症となります。そのうち約2千人の患者さんが亡くなっています。新規の患者さんは、高齢者に多いとされますが、結核に対する免疫は自然に獲得できることはほぼありません。飛沫核感染(空気感染)によって感染し、大人から子どもに感染することも少なくありません。乳児は結核に対する抵抗力が弱く、重症化しやすいだけでなく、結核菌がリンパや血液と共に全身の臓器に移り、全身性の結核症を引き起こすこともあります。結核性髄膜炎を起こすと重い後遺症を残す可能性もあります。
感染はしているが症状はでていない状態の方もおられ、加齢や病気にかかるなどの免疫力の低下と共に発症する場合もあります。
他のワクチンと違いBCGワクチンは、『はんこ注射』とも呼ばれ9本の針が植え付けられた注射器具を使用し接種します。
そしてBCGワクチンで重要なのは、接種した後の接種部位の反応を経過観察していただく必要があります。接種した日の入浴や保湿剤などの塗布は問題ありませんが、こすったり、引っかいたりしないようにしてください。接種部位の皮膚の状態が、4ヶ月ほどかけてゆっくりと変化していきます。下の画像(図1)を参照してください。

接種直後は、あまり目立たないですが、接種後、約1ヶ月から1ヶ月半ほどすると接種部位の赤みがかなり増強し、皮がめくれてくるような反応が起こります。赤みが強いので心配される保護者の方も多いですが、化膿したり、赤みがどんどん増強したりする様子がなければ経過観察で大丈夫です。
赤みも徐々に引いてきてだんだんと目立たなくなっていきます。
しかし、異常な経過反応があることも知っておいてください。通常接種してから4ヶ月ほどかけて起こる反応が、1週間のうちに起こってしまう反応があります。そのことを『コッホ現象』と呼びます。このコッホ現象(図2)は、BCGワクチンを接種する以前に、お子様が結核の抗体を体内に持っているために起こる反応です。

この現象が起きた場合は、実際にお子様の体に結核の抗体があるかどうかの検査【ツベルクリン反応検査】を実施する必要があります。コッホ現象が起きたことで命に関わるようなことにはなりませんので、かかりつけ医、接種をうけた病院へ受診をして接種部位を観察してもらってください。コッホ現象によく似た反応もありますので判断に迷う場合は、かならず医師の診察を受けていただくことをお勧めします。
一般的な予防接種スケジュールでは、生後5ヶ月~生後8ヶ月ごろの接種が一般的です。BCGワクチンを定期接種で受けられる年齢は、1歳までとなります。接種忘れなどに気付いたら早めに接種を行いましょう。
予防接種

四種混合ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。生後2ヶ月からできる予防接種のひとつに四種混合ワクチンがあります。
四種混合ワクチンには、百日咳・ジフテリア・破傷風・ポリオ(急性灰白髄炎)の4種類の疾患を予防するワクチンです。
百日咳は、百日咳菌およびパラ百日咳菌による感染症で、急性の気道感染症です。約7~10日間の潜伏期を経て、カタル症状(38℃前後の発熱・咳・鼻汁・くしゃみ・結膜充血・眼脂など)で発症します。その後咳が激しくなり、とくに1歳(生後6か月)以下の乳児で発症すると致命率も高く、激しい咳の為に呼吸ができなくなり全身が青紫色になったり(チアノーゼ)、けいれんを引き起こしたりするなど重篤な症状が起き注意が必要です。
ジフテリアは、ジフテリア菌による感染症で約2~5日間の潜伏期を経て、発熱・咽頭痛・嚥下痛などで発症します。さまざまな病型があり、鼻ジフテリア、扁桃・咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリアなどで、喉などで菌が毒素を出すことで、眼球や横隔膜などの麻痺、心不全などを起こし、重篤になるとなくなる場合がある病気です。日本では1999年の岐阜県での死亡例(1人)を最後に患者報告はありません。
百日咳・ジフテリアの感染経路は、おもに気道の分泌物とされています。
破傷風は、破傷風菌が産生する破傷風毒素により発症する感染症で、約3~21日間の潜伏期を経て、開口障害、首筋が張るなどの症状で発症し、次第に顔の筋肉が引きつって痙笑(けいしょう:ひきつり笑い)と呼ばれる特徴的な表情が現れます。そのあと、頸部から背部にかけての筋肉がひきつり全身性の筋硬直が起こり、窒息によって死亡する危険も高くなる病気です。筋肉のけいれんが十分に戻るまでには時間を要するため、発症すると長期間の入院が必要になります。破傷風菌は土壌中に存在し、傷口から侵入するとされており、日本でも2011年の東日本大震災、2018年の西日本豪雨において破傷風の患者が被災地から報告されています。世界中の多くの地で破傷風菌は生息しており、破傷風に対する免疫がなければ世界のどこでも感染、発症の恐れがあります。
ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスが口から侵入し、腸で増殖することで感染します。感染した人の便の中のウイルスを介して感染が拡大します。感染者の90~95%は全くの無症状の「不顕性感染」で、約5%が感染後、約5日前後の潜伏期を経て、軽度の発熱、不快感、頭痛、眠気、咽頭痛などを示す「不全型」となります。また、感染者の1~2%で発熱、嘔気・嘔吐、項部硬直、四肢痛などを示す「髄膜炎」がみられます。ウイルスが腸から脊髄の一部に入り込むと四肢に左右非対称の弛緩性麻痺を生じ、後遺症として運動障害を起こします。かつては小児での患者が多く別名「小児まひ」とも呼ばれます。しかし小児に限った病気ではありません。
四種混合ワクチンは、これらの病気を予防することが認められているワクチンです。生後2ヶ月~1歳6か月ごろまでの4回接種をすると100%免疫抗体がつくとされます。しかし抗体の持続期間は長期ではなく、百日咳・ジフテリア・破傷風は約10年で免疫効果が減弱するとされます。そのため、近年では学童期での三種混合ワクチンの追加接種を推奨されています。接種は任意接種となるため自費での接種となります。
ポリオ(急性灰白髄炎)は、さらに免疫効果が短く、就学前(4~6歳)の不活化ポリオ(単独)ワクチンの追加接種が厚労省で検討されています。
一般的な予防接種スケジュールでは、生後2ヶ月・生後3か月・生後4か月と1歳6か月ごろの合計4回の接種が必要になります。四種混合ワクチンを定期接種で受けられる年齢に制限がありますので、接種忘れなどに気付いたら早めに接種を行いましょう。
前回掲載したロタウイルスワクチンとヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンと同時に接種が可能なワクチンとなります。
予防接種

【任意接種 スケジュール】

B型肝炎ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。生後2ヶ月からできる予防接種のひとつにB型肝炎ワクチンがあります。
B型肝炎ウイルス(HBV)は、皆さん一度は耳にしたことがあるかと思います。HBVは、ヒトの肝臓に感染し、一時的な感染あるいは持続感染(キャリア状態)を起こします。持続感染の多くは出生時または乳幼児期の感染で成立することが知られており、そのうち約10~15%は感染から年月を経て、慢性肝炎を発症し、その後肝硬変・肝細胞癌を発症することがあります。感染していても症状がなく、自身が持続感染状態にあることに気付かない人もいます。お母さんがHBV保有者(キャリア)であるかどうかを、妊娠時に採血(HBs抗原)で調べる理由のひとつ、出産時の血液でお子さまに感染が生じ急性肝炎・劇症肝炎などを引き起こさないよう出生直後から対応する必要があるからです。
現在では一人の患者様に対し、注射に用いる物品は全て単回使用が必須ですが、1988(昭和63)年頃までは、複数人に同じ物品を用いて注射を行っており、それが原因でHBVへ感染し発症した人もおり、給付金などの特別措置が日本では取られています。血液だけでなく体液(汗、涙、唾液、尿など)に接触するような「性行為」「血液透析」「歯科治療」「入れ墨」「ピアス」「針刺し事故」「歯ブラシ」「コンタクトスポーツ(他者と接触するようなスポーツ)」などが感染経路として報告されています。母子感染予防のみでは防げない集団感染や母子以外の家族からの感染を予防するために、乳児期からのワクチン接種で抗体をつけていく必要があります。
B型肝炎ワクチンは、免疫を獲得すると20~30年以上にわたってHBVに触れる機会があっても、急性肝炎や慢性B型肝炎の発症予防の効果が認められているワクチンです。一般的な予防接種スケジュールでは、生後2ヶ月・生後3か月・生後7か月の合計3回の接種が必要になります。1回目のワクチン接種と3回目の接種は、既定の間隔をあける必要があり、定期接種として接種できる年齢は1歳の誕生日を迎える前日までという制限があります。接種忘れなどに気付いたら早めに接種を行いましょう。
前回掲載したロタウイルスワクチンとヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンと同時に接種が可能なワクチンとなります。
予防接種