泣き止まない

泣き止まない

写真:泣き止まない

子どもは「泣くのが仕事」などと言いますが、いろいろと考えて対処してもどうしても泣き止まない時もあります。 大人は悲しい、悔しい、嬉しい、痛いなどの感情表現で涙を見せますが、乳児は言葉を扱うことがまだ不十分・未発達なため、うんちやおしっこをしたいとき、眠いとき、お腹が空いたとき、甘えたいときなど、さまざまな状況で泣くことがあります。他にもどこか体の具合が悪いために機嫌が悪い時や、不調を訴える場合に泣くこともあります。病気ではありませんが夜泣きもあります。 それでは泣き方はどうでしょうか。これも状況によって音程やイントネーション、声の強弱などさまざまです。 泣くという行為は、感情表現でも生理的欲求であっても、子どもにとって非常に大切な表現方法で、成長の過程・成長の証でもあるのです。こうした表現にきちんと気付いて適切に対応していくことが大切です。また、泣いている時の様子やしぐさをよく見て、いつもと違う泣き方をしていないかを確認することも重要です。

泣き止まない原因

泣き止まない原因はさまざまですが、病気や不調が原因であることも少なくありません。

  • 発熱:子どもが体調の変化を感じて不安になったりしんどくて不快で泣くことがあります。さっきまで元気に遊んでいたのに、急に静かになってお父さんやお母さんにゴロゴロと寄り添ってくる事もあります。
  • 腹痛:痛みが強い便秘は、子どもがよく泣く原因の一つですが、腹痛の原因となる病気で早い診断が必要なものに「腸重積」と「鼠経ヘルニア嵌頓」があります。 腸重積とは、3か月~2歳くらいまでにみられる男児に多い病気です。腸の中に腸がもぐりこんでしまい、腸が締め付けられるため腸閉塞になります。周期的な痛みや嘔吐が特徴で、痛みが弱くなると平気な様子で過ごしますが、また痛みが強くなると泣き出し、いちごゼリーのような便(粘血便といいます)となって出ることがあります。お腹を触るとしこりが感じられ、さらに症状が進むと腸の締め付けが強くなり、腸全体が腐ってしまいます。 鼠経ヘルニアは、子ども100人に2~5人が発症する病気です。足の付け根部分(鼠径部)のすき間から腸管から飛び出てくるもので、「脱腸」とも呼ばれます。通常は違和感があるものの痛みは少なく、力を抜くと飛び出た腸管は元の位置に戻ります。まれに飛び出た腸管がすき間に締め付けられる「嵌頓(かんとん)」を起こし、痛みが強くなると泣きます。嵌頓になると腸管がむくみ、腐ったり、穴が開いたりすることがあります。
  • 頭痛:強く泣くことの多い原因の一つで、泣き叫んだり、甲高い声で泣いたりします。外傷があるときはもちろんですが、頭を打ったにも関わらず外傷がない場合には頭の中に出血していることもありますので、どのように過ごしていたのかを特によく見ておく必要があります。
  • 痛み:いわゆる「ひじがはずれた」状態の「肘内障(ちゅうないしょう)」などの痛みが原因で泣くことがあります。肘の関節がずれて動かなくなっているので、腕を動かせずに泣いているのであれば肘内障を疑います。早期に整復(正しい位置に戻す処置のこと)を行うことが必要です。

自宅でできる対応

―観察のポイント―

泣き止まない時には、その原因が感情によるものであれば、お父さんやお母さんの声掛けや抱いてあげることでやきやむことがほとんどでしょう。しかしその原因が病気の場合は泣き止むことはありません。まずは子どもの様子やしぐさからいつもと違っていないかを観察しましょう。

  • 手足は動かしているか?
  • 周りの様子に興味を示すか?
  • おもちゃで遊ぶか?
  • 目線は合うか?
  • 泣き声が弱々しいまたは、変な泣き声ではないか?
  • あやすと笑うか?
  • 痛いところはなさそうか?
  • 顔色は悪くないか?
  • 息が荒くなっていないか?
  • 他に症状(発熱・咳・嘔吐・ゼイゼイとした呼吸)があるか?

特に生後3か月ごろまでの赤ちゃんの場合は、「なにかおかしいな」と感じたら早めに受診することをおすすめします。判断に迷う場合は、医療機関に相談してみましょう。 なお、年長の子どもの場合は、目線がしっかり合っていて、呼びかけに対して明瞭に反応でき、顔色がよい場合には、しばらく自宅で観察を続けましょう。

泣き止まない時の検査

全ての年齢で以下のような様子が見られた場合、すぐに医療機関を受診しましょう。大きな病気が隠れている可能性があります。

  • 泣き声が弱々しい、大きな声で泣けない
  • ぐったりして起き上がらない
  • 呼びかけに対する反応が悪い
  • 目線が合わない
  • 呼吸が苦しそう
  • 繰り返し吐く
  • 皮膚や顔色が悪い(青っぽい、白っぽい、まだら)
  • 周期的に泣く、泣き止むを繰り返す
  • 腹痛や頭痛などの症状があり、程度が激しい

医療機関を受診し腸重積を疑う場合は、超音波検査を行い診断します。治療は肛門から液や空気をいれて圧かける方法で行います。腸重積の整復は発症後24時間以内であれば8割が可能とされていますが、この方法で整復できない場合には手術による整復になります。腸の血流の状態によっては腸の切除が必要になることもあります。

泣き止まない時の治療方法

泣き止まないことそのものへの治療法はありません。病気も含め、何かしら原因がある場合には、その原因が取り除かれれば泣き止むでしょう。しかし実際には原因がよくわからないことも少なくありません。特に生後1年くらいまでの間は特に泣き止まない状態がよく見られます。哺乳や食事ができており、嘔吐や発熱などの症状がなければ経過をみてもよいでしょう。判断がつかず不安な場合は病院で相談してみてもよいかもしれません。 その他、抱っこする人をかえてみる、外に出てみるなど、いつもとは違うちょっとしたことで泣き止むこともあります。ぐずっているだけなのであれば、泣き疲れたら寝てしまうこともあります。