鼻汁

鼻汁の症状

写真:鼻汁の症状

鼻汁とはいわゆる鼻水のことで、鼻の粘膜が炎症を起こしている状態です。鼻汁の中身は、粘膜の下の毛細血管の充血やむくみによって分泌される「粘液」です。 鼻の穴からのどまでを鼻腔(びくう)といいます。鼻腔は目や耳と管でつながり、顔の奥にある空洞(副鼻腔)ともつながる、大変複雑な構造をしています。鼻腔には、そこを通る空気を適度に加温・加湿し、ウイルスやほこりなどを浄化し、臭覚によって有害物質をかぎ分けるという働きがあります。 鼻汁は鼻の粘膜から分泌されていますが、実は健康な状態でも1日に数リットルという量が作られています。鼻汁には加湿と、ほこりや花粉、ウイルスなどの異物を外に出す働きがあります。 鼻汁には、色は透明でさらさらしたタイプのものと、黄色いどろっとした膿のようなタイプのものがあります。

鼻汁の原因

鼻汁の原因で多いのは風邪で、鼻汁はさらさらとしたタイプから始まり、徐々に黄色く粘度のあるどろっしたタイプにかわっていきます。鼻汁が気管に流れると咳が出て、炎症が強くなり鼻の粘膜が腫脹すると鼻づまりになり、炎症が目につながる「鼻涙管」にまで広がると涙目になったり、目やにが出たりします。炎症が耳につながる「耳管」にまで広がると中耳炎になります。 鼻汁の中でも、のどの奥に流れるものを特に「後鼻漏」といいます。これがみられる場合、副鼻腔の炎症によるもの(急性副鼻腔炎)の可能性がありますが、風邪がよくなると自然に治ります。風邪が治っても黄色く粘度の高い後鼻漏が続く場合は、慢性副鼻腔炎になっているかもしれません。 サラサラとした鼻汁が続く場合には、アレルギーの可能性があります。こうした鼻汁は顕微鏡でみると、アレルギー反応と関わりがある「好酸球」という白血球の一種が多く見られます。

自宅でできる対応

風邪の場合、一般的には1~2週間以内には自然に治ります。その間は一般的な風邪の対応として安静に過ごすこと、睡眠を十分にとること、水分・栄養補給が大切です。また、環境を整えることも大切で、適度な加湿と加温をこころがけましょう。特に寒い季節は空気が乾燥してウイルスが繁殖しやすくなるため、湿度には気をつけましょう。その上で鼻汁の拭き取り、必要に応じて吸い取りなどを行います。鼻の下が荒れてしまうこともありますので、その場合には清潔なガーゼで拭いて軟膏を塗るなど、肌を保護してください。 ただし、症状が強く苦痛がある場合などは鼻腔炎や中耳炎などの可能性がありますので、小児科を受診するようにしましょう。

鼻汁の検査

まずは、風邪などの感染症があるかどうかを調べます。鼻汁の原因が感染症ではない場合、アレルギーによるものかどうかを調べていきます。 アレルギー性鼻炎は、人間に備わっている「異物を排除する仕組み=免疫」の効果が強く現れるものです。異物を排除して次の侵入を防ぐために、くしゃみ、鼻汁、鼻づまりを起こします。アレルギー性鼻炎の原因物質(アレルゲン)は、通年性のものであれば約9割はダニ、季節性のものであればその多くは花粉です。アレルギー性鼻炎の検査には、鼻汁にアレルギー反応と関わる特徴的な細胞がどのくらいみられるかどうかを調べる「鼻汁好酸球検査」、アレルゲンやその強さを調べるために血液や皮膚でおこなう「抗体検査」、アレルギー反応を誘発するかどうかを調べる「鼻粘膜誘発テスト」などがあります。 鼻汁のほかに合併症が考えられる場合は、検査等で鑑別します。たとえば副鼻腔炎では、内視鏡を使って鼻の中を詳しく調べる検査や鼻の通り具合を調べる検査を行います。必要に応じてレントゲン検査やCT検査などを行ったり、原因となる細菌を調べる検査を行ったりすることもあります。

鼻汁の治療方法

鼻汁の原因がかぜの場合は、出ている症状を和らげるお薬を服用します。かぜの原因のほとんどはウイルスによるものですから、抗生物質は効きません。 鼻汁の原因がアレルギー性鼻炎の場合、第一にダニや花粉などのアレルゲンを除去・回避することが大切です。ダニの繁殖しにくい環境を整え、花粉に対してはマスク、帽子、めがねなどを着用しましょう。症状に応じて、抗ヒスタミン薬内服やステロイド薬点鼻などを組合せて使用します。 また、ダニやスギ花粉に対しては、「アレルゲン免疫療法」という長期的に病状を改善させる可能性がある治療方法もあります。これは定期的にアレルゲンを体内に入れて免疫反応を変化させていく治療法で、皮下免疫療法と舌下免疫療法があります。ただしアレルゲン免疫療法には適応となる年齢が決まっていますので、詳しいことは医療機関で相談しましょう。