小児の風邪

小児の風邪の症状

写真:小児の風邪

一般的に「風邪」と呼ばれるのは、「急性上気道炎」、「感冒」、「かぜ症候群」、「急性気道感染症」などさまざまな呼び方でも表現される、「気道」に炎症が起こる病気です。気道は鼻や口から肺に至るまでの空気の通り道を指しますが、風邪は鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭、の「上気道」と呼ばれる部位に症状が現れるものをいいます。そのため症状が現れる部位から「鼻炎」「咽頭炎」「喉頭炎」という病名が使われることもあります。
主な症状としては、鼻汁、鼻閉(びへい:鼻づまりのこと)、くしゃみ、咳、痰、のどの痛み、頭痛、発熱があります。また、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢を伴ったり、不安や不機嫌になったりすることもあります。子どもの場合は、鼻汁や鼻閉とともに「副鼻腔炎」を起こしていることもあります。副鼻腔炎を起こすと「後鼻漏」と呼ばれる、鼻汁がのどの後ろから流れ落ちる状態になり、それが刺激となって咳や喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー・ヒューヒューなどの呼吸音)を引き起こすことがあります。
さまざまな症状が現れる風邪ですが、くしゃみやサラサラとした水っぽい透明な鼻汁から始まり、熱が出て、咳が出始めて、鼻汁はねっとりとした黄色や青色になり、それがまた水っぽいものになります。
他の病気を合併していなければ2~3日で解熱し、風邪全体の症状も1週間ほどでよくなります。反対に、それ以上の時間をかけている症状が続いていたり、症状がひどくなったりしているのであれば、下気道(気管支や肺)に炎症が起こる気管支炎や肺炎、副鼻腔炎や中耳炎の可能性が考えられます。

小児の風邪の原因

風邪は、主に大気中から病原体が侵入し上気道にくっついて増殖する感染症です。原因となる病原体の約90%はウイルスで、原因ウイルスの数は200種類以上とされていますが、季節によって多く見られるウイルスがあります。
また、原因ウイルスによって現れる症状に特徴があることもわかっています。たとえば、夏にはアデノウイルスやコクサッキーウイルス、エンテロウイルス、エコーウイルスなどがよくみられ、これらを原因とする風邪は一般的に「夏風邪」と呼ばれ、中でもアデノウイルスでは熱が下がりにくいという特徴があります。他には、ひどい鼻汁の症状がみられるライノウイルス、急激で強い症状が現れるインフルエンザウイルス、強い鼻炎症状や痰がからんだ咳が現れるRSウイルスなどがあります。
子どもの場合、乳幼児期は特に、体の構造や働きが未熟なため、症状が出やすかったり強く出たりすることがあります。

自宅でできる対応

風邪のときは、体の免疫力を高めることがいちばん大切です。それには安静と十分な睡眠、栄養と水分を十分にとり、適度な加湿も行います。鼻汁や咳といった症状は、病原体などの異物を体の外に押し出す役割があり、これらは体に備わった防御反応ですから、無理に止めなくても構いません。ただし、そのせいで呼吸が苦しそう、眠れない、咳で嘔吐するなどの場合は対処してあげましょう。

咳き込みが激しいとき、ぜーぜー言って呼吸が苦しそうなとき

乳児…体を起こして抱っこして、咳が落ち着くまでは背中をさすったり、トントンと軽く叩いたりする
     寝かせる時は枕やクッションで高さをつけ、上体が少し上がった状態にして横向きにする

幼児…座った姿勢でひざを曲げる、腹筋を緩める、深呼吸を促す ​

咳き込んで嘔吐するとき

ミルクや食事の量を少し減らし回数を増やす、酸味のあるものや辛い物など刺激物は避けて軟らかく食べやすい物にする​

なお、次のような場合は早めに病院を受診しましょう​

  • 咳きこみ嘔吐を繰り返す
  • ぜーぜーいう呼吸が続く
  • 犬が吠えるようなまたはオットセイが鳴くような音の咳をしている
  • 肩で息をしている、鼻の穴がヒクヒク開くように呼吸している、息を吸う時に肋骨の間や下、鎖骨の上、のどの下がくぼむ

小児の風邪の検査

風邪の時は、その原因ウイルスを確定するため血液検査や抗原検査を行うことがあります。ただし、こうした検査は必須ではなく、問診や診察、家族内での同症状の有無、生活環境や周囲の流行など総合的に判断します。肺炎の可能性が考えられる場合には、レントゲン検査、CT検査を行います。

小児の風邪の治療方法

風邪のケアで大切なことは、安静、睡眠、栄養、水分、適度な加湿で、基本的には自然に治癒します。風邪のほとんどはウイルスによる感染症ですから、細菌を対象とした「抗生物質」は効果がありません。また、鼻汁や咳、熱など症状の程度に応じた対症療法を行います。
なお、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、肺炎など細菌感染による合併症が疑われる場合には、抗生物質を使います。