おたふくかぜ

おたふくかぜの症状

写真:おたふくかぜ

おたふくかぜは、正式には「流行性耳下腺炎」という病気で、基本的には軽症で経過する感染症です。「ムンプス」と呼ばれることもあります。 潜伏期間は2~3週間程度で、主な症状としては、片側または両側の耳下腺の唾液腺の腫れ、押したり触ったりすると痛む(圧痛)、発熱です。腫れのピークは通常48時間以内、発熱は数日続きます。また、唾液腺の腫れは耳下腺だけでなく、顎下線や舌下腺と呼ばれる部位でも起こることがあります。なかには頭痛や倦怠感、筋肉痛、首の痛み、食欲不振などの症状を伴うこともあります。病気全体は1~2週間でよくなります。一方で、感染してもはっきりとした症状が出ない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」が全体の30~35%ほどあるとされています。

おたふくかぜには合併症が多いのが特徴です。10~100人に1人の割合で「無菌性髄膜炎」がみられ、頭痛や発熱・嘔吐などの症状は髄膜炎から起こる症状とみられていますが、後遺症なく経過し治ります。まれに「脳炎」や「脳症」を起こしてけいれんや意識障害を起こすこともあり、命に関わることもあります。また400~1000人に1人の割合で「難聴」がみられ、有効な治療法がなく重度の難聴が残ります。他にも1000人に1人の割合で膵炎がみられ、思春期以降では精巣炎や卵巣炎、乳腺炎がみられます。

おたふくかぜの原因

おたふくかぜの原因は「ムンプスウイルス」の感染です。人から人に、主に唾液によって感染します。ウイルスはまず、のどの入口に入りこみ増えていきます。それらが血液に入り、唾液腺、髄膜、膵臓、精巣、卵巣、甲状腺、腎臓、中枢神経など全身にまわり、再び増えて炎症などを引き起こします。

ムンプスウイルスは、唾液腺が腫れる6日前~腫れて9日ごろまで唾液に存在しています。それが感染源となりますが、感染力がかなり強いのが特徴です。

自宅でできる対応

おたふくかぜになった時に自宅でできる対応は、つらい症状が現れる時期を少しでも楽に過ごせるようすること、感染を広げないようにすること、合併症を予防することです。具体的には次のとおりです。

  • 腫れがひくまでは安静に過ごす
  • 十分な水分を摂る、ただし唾液の分泌を促す酸味のあるものは控える
  • 痛みを和らげるため腫れている部分を冷やす
  • 強い痛みや熱がある時は入浴を控える
  • 高熱が続く場合や異常を感じたら医療機関を受診する

なお、おたふくかぜは学校保健安全法による第2種感染症に指定されているため、耳下腺などの腫れが現れてから5日経過し全身状態がよくなるまでは出席停止となります。

おたふくかぜの検査

おたふくかぜは通常、経過や症状、所見で診断します。感染を証明するための検査は必須ではありません。検査にはムンプスウイルスの抗体価を調べる血液検査がありますが、結果が出るのに数日かかります。ワクチン接種済みで周囲に流行がない、耳下腺等の腫れが片側だけ、発熱していない、腫れが短期間で無くなったなど、典型的なおたふくかぜの症状ではない場合に行う事があります。

おたふくかぜの治療方法

おたふくかぜの原因病原体であるムンプスウイルスへの特効薬はありません。痛みや熱には解熱鎮痛剤、嘔吐や脱水症状があれば点滴など、感染によって現れている症状を和らげる「対症療法」が主体となります。また特に髄膜炎を起こしている場合には安静に努めることも大切です。
おたふくかぜには特効薬がありませんが、有効な予防方法としてワクチンがあります。接種後の抗体価を調べた報告によると、90%前後に有効な抗体が得られていて、接種した人のうちおたふくかぜにかかった例は1~3%だったとしています。
ただし、ワクチン接種には副反応もあり、接種後2~3週間後に、発熱や耳下腺など唾液腺の腫れなどおたふくかぜにかかったような症状が出ることがあります。また、接種後3週間前後に4000接種に1人程度の割合で、無菌性髄膜炎が発生することがあると言われますが、いずれもおたふくかぜにかかった場合に比べその程度や頻度は軽いとされています。