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BCGワクチンについて

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。
一般的に、生後5ヶ月から生後8か月に達するまでに接種するワクチンにBCGワクチンがあります。BCGワクチンは結核予防ワクチンです。
結核は昔の病気のようなイメージがありますが、現在でも年間約1万5千万人の患者さんが発生している感染症となります。そのうち約2千人の患者さんが亡くなっています。新規の患者さんは、高齢者に多いとされますが、結核に対する免疫は自然に獲得できることはほぼありません。飛沫核感染(空気感染)によって感染し、大人から子どもに感染することも少なくありません。乳児は結核に対する抵抗力が弱く、重症化しやすいだけでなく、結核菌がリンパや血液と共に全身の臓器に移り、全身性の結核症を引き起こすこともあります。結核性髄膜炎を起こすと重い後遺症を残す可能性もあります。
感染はしているが症状はでていない状態の方もおられ、加齢や病気にかかるなどの免疫力の低下と共に発症する場合もあります。
他のワクチンと違いBCGワクチンは、『はんこ注射』とも呼ばれ9本の針が植え付けられた注射器具を使用し接種します。
そしてBCGワクチンで重要なのは、接種した後の接種部位の反応を経過観察していただく必要があります。接種した日の入浴や保湿剤などの塗布は問題ありませんが、こすったり、引っかいたりしないようにしてください。接種部位の皮膚の状態が、4ヶ月ほどかけてゆっくりと変化していきます。下の画像(図1)を参照してください。

接種直後は、あまり目立たないですが、接種後、約1ヶ月から1ヶ月半ほどすると接種部位の赤みがかなり増強し、皮がめくれてくるような反応が起こります。赤みが強いので心配される保護者の方も多いですが、化膿したり、赤みがどんどん増強したりする様子がなければ経過観察で大丈夫です。
赤みも徐々に引いてきてだんだんと目立たなくなっていきます。
しかし、異常な経過反応があることも知っておいてください。通常接種してから4ヶ月ほどかけて起こる反応が、1週間のうちに起こってしまう反応があります。そのことを『コッホ現象』と呼びます。このコッホ現象(図2)は、BCGワクチンを接種する以前に、お子様が結核の抗体を体内に持っているために起こる反応です。

この現象が起きた場合は、実際にお子様の体に結核の抗体があるかどうかの検査【ツベルクリン反応検査】を実施する必要があります。コッホ現象が起きたことで命に関わるようなことにはなりませんので、かかりつけ医、接種をうけた病院へ受診をして接種部位を観察してもらってください。コッホ現象によく似た反応もありますので判断に迷う場合は、かならず医師の診察を受けていただくことをお勧めします。
一般的な予防接種スケジュールでは、生後5ヶ月~生後8ヶ月ごろの接種が一般的です。BCGワクチンを定期接種で受けられる年齢は、1歳までとなります。接種忘れなどに気付いたら早めに接種を行いましょう。
予防接種

四種混合ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。生後2ヶ月からできる予防接種のひとつに四種混合ワクチンがあります。
四種混合ワクチンには、百日咳・ジフテリア・破傷風・ポリオ(急性灰白髄炎)の4種類の疾患を予防するワクチンです。
百日咳は、百日咳菌およびパラ百日咳菌による感染症で、急性の気道感染症です。約7~10日間の潜伏期を経て、カタル症状(38℃前後の発熱・咳・鼻汁・くしゃみ・結膜充血・眼脂など)で発症します。その後咳が激しくなり、とくに1歳(生後6か月)以下の乳児で発症すると致命率も高く、激しい咳の為に呼吸ができなくなり全身が青紫色になったり(チアノーゼ)、けいれんを引き起こしたりするなど重篤な症状が起き注意が必要です。
ジフテリアは、ジフテリア菌による感染症で約2~5日間の潜伏期を経て、発熱・咽頭痛・嚥下痛などで発症します。さまざまな病型があり、鼻ジフテリア、扁桃・咽頭ジフテリア、喉頭ジフテリアなどで、喉などで菌が毒素を出すことで、眼球や横隔膜などの麻痺、心不全などを起こし、重篤になるとなくなる場合がある病気です。日本では1999年の岐阜県での死亡例(1人)を最後に患者報告はありません。
百日咳・ジフテリアの感染経路は、おもに気道の分泌物とされています。
破傷風は、破傷風菌が産生する破傷風毒素により発症する感染症で、約3~21日間の潜伏期を経て、開口障害、首筋が張るなどの症状で発症し、次第に顔の筋肉が引きつって痙笑(けいしょう:ひきつり笑い)と呼ばれる特徴的な表情が現れます。そのあと、頸部から背部にかけての筋肉がひきつり全身性の筋硬直が起こり、窒息によって死亡する危険も高くなる病気です。筋肉のけいれんが十分に戻るまでには時間を要するため、発症すると長期間の入院が必要になります。破傷風菌は土壌中に存在し、傷口から侵入するとされており、日本でも2011年の東日本大震災、2018年の西日本豪雨において破傷風の患者が被災地から報告されています。世界中の多くの地で破傷風菌は生息しており、破傷風に対する免疫がなければ世界のどこでも感染、発症の恐れがあります。
ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスが口から侵入し、腸で増殖することで感染します。感染した人の便の中のウイルスを介して感染が拡大します。感染者の90~95%は全くの無症状の「不顕性感染」で、約5%が感染後、約5日前後の潜伏期を経て、軽度の発熱、不快感、頭痛、眠気、咽頭痛などを示す「不全型」となります。また、感染者の1~2%で発熱、嘔気・嘔吐、項部硬直、四肢痛などを示す「髄膜炎」がみられます。ウイルスが腸から脊髄の一部に入り込むと四肢に左右非対称の弛緩性麻痺を生じ、後遺症として運動障害を起こします。かつては小児での患者が多く別名「小児まひ」とも呼ばれます。しかし小児に限った病気ではありません。
四種混合ワクチンは、これらの病気を予防することが認められているワクチンです。生後2ヶ月~1歳6か月ごろまでの4回接種をすると100%免疫抗体がつくとされます。しかし抗体の持続期間は長期ではなく、百日咳・ジフテリア・破傷風は約10年で免疫効果が減弱するとされます。そのため、近年では学童期での三種混合ワクチンの追加接種を推奨されています。接種は任意接種となるため自費での接種となります。
ポリオ(急性灰白髄炎)は、さらに免疫効果が短く、就学前(4~6歳)の不活化ポリオ(単独)ワクチンの追加接種が厚労省で検討されています。
一般的な予防接種スケジュールでは、生後2ヶ月・生後3か月・生後4か月と1歳6か月ごろの合計4回の接種が必要になります。四種混合ワクチンを定期接種で受けられる年齢に制限がありますので、接種忘れなどに気付いたら早めに接種を行いましょう。
前回掲載したロタウイルスワクチンとヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンと同時に接種が可能なワクチンとなります。
予防接種

【任意接種 スケジュール】

B型肝炎ワクチンについて💉

当院では、各種予防接種を受けることができます。現在の定期予防接種は生後2ヶ月からが開始するのが一般的になっています。生後2ヶ月からできる予防接種のひとつにB型肝炎ワクチンがあります。
B型肝炎ウイルス(HBV)は、皆さん一度は耳にしたことがあるかと思います。HBVは、ヒトの肝臓に感染し、一時的な感染あるいは持続感染(キャリア状態)を起こします。持続感染の多くは出生時または乳幼児期の感染で成立することが知られており、そのうち約10~15%は感染から年月を経て、慢性肝炎を発症し、その後肝硬変・肝細胞癌を発症することがあります。感染していても症状がなく、自身が持続感染状態にあることに気付かない人もいます。お母さんがHBV保有者(キャリア)であるかどうかを、妊娠時に採血(HBs抗原)で調べる理由のひとつ、出産時の血液でお子さまに感染が生じ急性肝炎・劇症肝炎などを引き起こさないよう出生直後から対応する必要があるからです。
現在では一人の患者様に対し、注射に用いる物品は全て単回使用が必須ですが、1988(昭和63)年頃までは、複数人に同じ物品を用いて注射を行っており、それが原因でHBVへ感染し発症した人もおり、給付金などの特別措置が日本では取られています。血液だけでなく体液(汗、涙、唾液、尿など)に接触するような「性行為」「血液透析」「歯科治療」「入れ墨」「ピアス」「針刺し事故」「歯ブラシ」「コンタクトスポーツ(他者と接触するようなスポーツ)」などが感染経路として報告されています。母子感染予防のみでは防げない集団感染や母子以外の家族からの感染を予防するために、乳児期からのワクチン接種で抗体をつけていく必要があります。
B型肝炎ワクチンは、免疫を獲得すると20~30年以上にわたってHBVに触れる機会があっても、急性肝炎や慢性B型肝炎の発症予防の効果が認められているワクチンです。一般的な予防接種スケジュールでは、生後2ヶ月・生後3か月・生後7か月の合計3回の接種が必要になります。1回目のワクチン接種と3回目の接種は、既定の間隔をあける必要があり、定期接種として接種できる年齢は1歳の誕生日を迎える前日までという制限があります。接種忘れなどに気付いたら早めに接種を行いましょう。
前回掲載したロタウイルスワクチンとヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンと同時に接種が可能なワクチンとなります。
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