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突然の熱性けいれんにどう対応する?聞かれる対処法

「いつも通り元気だったのに、急に体がガクガク震えだして…」「目を白黒させて意識がなくなって、どうしたらいいか分からなかった」。熱性けいれんについて、このようなご相談をいただくことがあります。熱性けいれんは、初めて目の当たりにすると誰でもパニックになってしまうものです。お子さんの突然の異変に直面したとき、どのように対応すれば良いのか、そして日頃からどのような心構えでいれば良いのか、一緒に考えていきましょう。

 

熱性けいれんってどんなもの?慌てずに見極めるポイント

熱性けいれんとは、生後6ヶ月から5歳くらいまでの子どもが、急な発熱に伴って引き起こすけいれん発作のことです。高熱が出たときによく見られ、全身がガクガクと震えたり、硬直したりします。多くの場合、発作は数分以内(5分未満)で自然に治まります。初めて見ると、本当にびっくりしてしまいますよね。まず大切なのは、慌てずに発作の様子をしっかり観察することです。具体的には、次の3つのポイントを覚えておきましょう。

  • けいれんが始まった時間と終わった時間を正確に記録する:いつからけいれんが始まったか、何分続いたか。スマートフォンなどで動画を撮っておくと、後で医師に見せるときに非常に役立ちます。
  • 体のどの部分がけいれんしているか:全身か、それとも手足など体の一部か。
  • けいれんしている間の意識の状態:呼びかけに反応するか、目がどこを向いているか。

これらの情報は、診察の際に医師が適切な判断をするための重要な手がかりになります。落ち着いて行動することが、お子さんを守る第一歩です。

 

発作が起きたときの「絶対にやってはいけないこと」と「やるべきこと」

いざというときのために、発作時の正しい対処法を知っておくことはとても重要です。つい慌ててしまいがちですが、「やってはいけないこと」を先に知っておくことで、お子さんを危険から守ることができます。

<絶対にやってはいけないこと>

  1. 体を強く揺さぶったり、押さえつけたりする:発作を無理に止めようとすると、骨折などのけがにつながる危険があります。
  2. 口の中に指やスプーンなどを入れる:舌を噛むことを心配して何かを口に入れようとすると、窒息の危険があります。
  3. 大声で名前を呼んだり、頬を叩いたりする:発作中は意識がないため、呼びかけても意味がありません。

<発作が起きたときのやるべきこと>

  1. お子さんの安全を確保する:硬い床や家具から離れた安全な場所に寝かせ、頭の下にタオルなどを敷いて保護しましょう。
  2. 顔を横向きにする:吐物や唾液が喉に詰まらないように、顔を横に向けて気道を確保します。
  3. 衣服を緩める:首周りや胸元を緩めて、呼吸を楽にさせてあげましょう。

焦る気持ちをぐっとこらえて、落ち着いてこれらの対応を実践してください。

 

どのタイミングで病院に行くべき?受診の目安と救急車の判断

熱性けいれんは多くの場合、発作が治まれば大事には至りませんが、中にはすぐに医療機関を受診する必要があるケースもあります。「けいれんがおさまった後、すぐに病院に行くべき?」と迷われる方も多いでしょう。

<すぐに病院を受診する目安>

  • 発作が5分以上続く場合:長引くけいれんは脳に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
  • けいれんが2回以上繰り返す場合:一度治まった後に、再びけいれんが始まる場合は、医師の診断が必要です。
  • 意識がはっきりしない時間が長い場合:発作後もぼんやりしていて、呼びかけに反応しない状態が続く場合は、受診を検討しましょう。
  • 生後6ヶ月未満または6歳以上の熱性けいれん:この年齢層での発作は、熱性けいれんではない可能性も考慮する必要があります。
  • 左右対称ではないけいれん:片側の手足だけがけいれんするなど、体の左右で差がある場合は注意が必要です。

これらのケースに当てはまる場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。特に、発作が5分以上続く場合は、迷わず救急車を呼ぶことが大切です。

 

繰り返す熱性けいれん…予防法や日常でできる備え

一度熱性けいれんを起こしたお子さんは、約3人に1人が再びけいれんを起こすと言われています。初めての熱性けいれんを経験すると、「またいつか起きてしまうのでは…」と不安に思う方も多いでしょう。予防策と日常的な備えについてご紹介します。

<熱性けいれんの予防法>

  • 解熱剤の適切な使用:かかりつけ医から処方された解熱剤は、熱が上がってきたとき(特に38.5℃以上)に適切に使用することで、急激な体温上昇を抑え、けいれんの予防につながることがあります。自己判断ではなく、医師の指示に従いましょう。
  • けいれん予防薬:医師の判断により、ジアゼパム坐剤(けいれんを予防する座薬)が処方されることがあります。発熱時に予防的に使用することで、けいれんを予防できます。

<日常でできる備え>

  • 体温計を常に準備しておく:お子さんが熱を出したときに、すぐに体温を測れるようにしておきましょう。
  • かかりつけ医の連絡先を確認する:夜間や休日でも連絡が取れる、地域の夜間救急診療所などの情報を把握しておくと安心です。
  • 家族みんなで情報を共有する:ご両親だけでなく、祖父母や保育園・幼稚園の先生など、お子さんに関わる人々にも熱性けいれんの既往歴を伝えておきましょう。

こうした日頃からの備えが、いざというときの心のゆとりにつながります。

 

保護者の方へ:地域の流行情報と小児科受診のタイミング

熱性けいれんは、急な発熱を伴う病気がきっかけで起こることがほとんどです。季節の変わり目にRSウイルスやインフルエンザ、アデノウイルスなどによる風邪が流行することがあります。これらのウイルス感染症は、突然の高熱が出ることが多いため、熱性けいれんを起こすきっかけになりやすいと言えます。

「うちの子、熱性けいれんを起こしたことがあるけど、今回も発熱したから心配…」という場合は、早めにかかりつけの小児科に相談することをおすすめします。特に、前回発作を起こしたときの状況や、お子さんの体質をよく知っている小児科医に診てもらうことで、いざというときの対応策を具体的に教えてもらうことができます。また、必要に応じて熱性けいれん予防の座薬を処方してもらうことも可能です。お子さんの些細な変化でも不安に感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

【まとめ】

お子さんの熱性けいれんは、保護者の方にとって非常に大きな不安とストレスをもたらします。しかし、ほとんどの場合は、お子さんの成長過程で起こる一過性の現象です。大切なのは、発作が起きたときに冷静に対応できる知識と心の準備をしておくこと。そして、不安な気持ちを一人で抱え込まず、かかりつけの小児科医にいつでも相談できる環境を整えておくことです。岡山市にお住まいのご家族の皆さん、何かご不安なことがあれば、いつでも当クリニックにご相談ください。皆さんの子育てが少しでも安心できるものになるよう、私たち小児科医がお手伝いします。